ATX電源は、CPUやGPUの高性能化に合わせて大きく進化してきました。 2000年代初頭は「+5V重視」の設計でしたが、Core 2 Duo や Athlon 64 以降は 「+12V重視」へと完全に移行し、さらに近年は PCIe 5.0 / 12VHPWR など 高出力時代に対応した新規格が登場しています。
2000年代前半:+5V重視から+12V重視へ
2000〜2003年頃の電源は、Pentium III / Athlon XP 時代の名残で +5Vラインに負荷が集中する設計でした。 当時のCPUはマザーボード上のVRMで+5Vから電圧変換していたためです。
しかし、Pentium 4(NetBurst)や Athlon 64(K8)以降は CPUの電源供給が+12Vへ移行し、電源の設計思想が大きく変わりました。
- ATX12V 4pin(CPU補助電源)が標準化
- +12Vラインの容量が重要視されるようになる
- 電源の品質差がPCの安定性に直結する時代へ
2000年代後半:ATX12V v2.x と 80PLUS の普及
2004〜2010年頃は、電源の品質が大きく向上した時代です。 ATX12V v2.x により、+12Vラインが強化され、PCI Express用の補助電源も標準化されました。
80PLUS 認証の登場(2004)
電源効率を示す 80PLUS 認証 が登場し、 Bronze / Silver / Gold / Platinum / Titanium といったランクが普及しました。
- 効率の悪い電源が市場から淘汰される
- 発熱・騒音の低減
- 高品質電源の需要が急増
2010年代:Haswell対応とマルチレーン/シングルレーン論争
2013年の Intel Haswell(第4世代Core)では、 低負荷時の電圧安定性(C6/C7ステート)が問題となり、 「Haswell対応電源」が話題になりました。
また、+12Vラインを複数に分ける「マルチレーン」と、 1本にまとめる「シングルレーン」の設計思想が議論される時期でもありました。
- シングルレーン:高出力GPU向け、扱いやすい
- マルチレーン:安全性が高い(過電流保護が働きやすい)
2020年代:PCIe 5.0 / 12VHPWR / ATX 3.0 の時代へ
GeForce RTX 3000/4000 シリーズの登場により、 電源は再び大きな転換期を迎えました。
12VHPWR(16pin)コネクタ
NVIDIA RTX 4090 などで採用された新しい電源コネクタで、 最大 600W を 1本で供給できます。
ATX 3.0 / ATX 3.1
PCIe 5.0 世代の GPU は瞬間的に定格の 2〜3倍の電力を要求するため、 電源の瞬間負荷(スパイク)に耐える設計が必須になりました。
- ATX 3.0:GPUの電力スパイクに対応
- ATX 3.1:12VHPWRの改良版「12V-2×6」を採用
電源選びのポイント(2000年〜現代)
- +12Vラインの容量(現代は最重要)
- 80PLUS 認証(Gold 以上が主流)
- ATX 3.0 / 3.1 対応(RTX 4000 以降なら必須)
- 保護回路(OCP/OVP/OTP/SCP)の有無
- 日本製コンデンサの採用
2000年代は「安い電源=危険」という時代でしたが、 現代は品質が大幅に向上し、信頼性の高いメーカーが主流になっています。