AMD の K10 世代(Phenom)および K10.5 世代(Phenom II / Athlon II)は、 AM2 / AM2+ / AM3 / AM3+ の4つのソケットにまたがって展開されました。 K8 世代と同様にメモリコントローラは CPU 側に統合されており、 チップセットは主に PCI Express、SATA、USB、HT(HyperTransport)帯域 を担当します。
この世代では AMD が ATI を買収したことで、チップセットは AMD純正(ATI系) が中心となり、サードパーティ製は急速に姿を消していきました。 ここでは AMD 7xx / 8xx / 9xx シリーズを中心に、K10 世代のチップセットをまとめます。
AMD 7xx シリーズ(AM2+ / AM3 / 2007-2009)
AMD 7xx シリーズは Phenom / Athlon 64 X2 時代の主力チップセットで、 HT3.0、PCI Express 2.0、DDR2/DDR3(AM3) に対応した初の本格プラットフォームです。 特に 790FX はハイエンド向けとして人気が高く、マルチGPU構成にも対応しました。
| チップセット | 780V | 780G | 790X | 790GX | 790FX |
|---|---|---|---|---|---|
| 対応ソケット | AM2+ | AM2+ / AM3 | AM2+ / AM3 | AM2+ / AM3 | AM2+ / AM3 |
| 内蔵 GPU | Radeon HD 3100 | Radeon HD 3200 | × | Radeon HD 3300 | × |
| PCI Express | PCIe 2.0 x16 ×1 | PCIe 2.0 x16 ×1 | PCIe 2.0 x16 ×2 | PCIe 2.0 x16 ×2(CrossFire) | PCIe 2.0 x16 ×4(最大4GPU) |
| USB | USB 2.0(SB700 / SB750) | ||||
| SATA | SATA-300(SB700 / SB750) | ||||
| RAID | RAID 0 / 1 / 10(SB700)、RAID 5 対応(SB750) | ||||
| 用途 | 廉価 IGP | 省電力 IGP | ミドルレンジ(単/デュアルGPU) | ミドルレンジ+高性能IGP | ハイエンド OC / マルチGPU |
AMD 8xx シリーズ(AM3 / 2010)
AMD 8xx シリーズは AM3(Phenom II / Athlon II) 向けのチップセットで、 SB850 により SATA 6Gbps に対応し、I/O 周りが大幅に強化されました。
| チップセット | 880G | 890GX | 890FX |
|---|---|---|---|
| 対応ソケット | AM3 | AM3 | AM3 |
| 内蔵 GPU | Radeon HD 4250 | Radeon HD 4290 | × |
| PCI Express | PCIe 2.0 x16 | PCIe 2.0 x16 ×2 | PCIe 2.0 x16 ×4 |
| USB | USB 2.0(SB850) | ||
| SATA | SATA-600(SB850) | ||
| RAID | RAID 0 / 1 / 5 / 10 | ||
| 用途 | 省電力 IGP | ミドルレンジ+高性能IGP | ハイエンド OC / マルチGPU |
AMD 9xx シリーズ(AM3+ / 2011-2014)
AMD 9xx シリーズは AM3+ 向けに設計されたチップセットで、 Bulldozer / Piledriver 世代(FX シリーズ)を主対象としつつ、 Phenom II / Athlon II(AM3)も多くが動作する互換性の高さが特徴です。
| チップセット | 970 | 990X | 990FX |
|---|---|---|---|
| 対応ソケット | AM3+ | AM3+ | AM3+ |
| 内蔵 GPU | × | ||
| PCI Express | PCIe 2.0 x16 | PCIe 2.0 x16 ×2 | PCIe 2.0 x16 ×4(最大4GPU) |
| USB | USB 2.0(USB 3.0 は外部コントローラ) | ||
| SATA | SATA-600(SB950) | ||
| RAID | RAID 0 / 1 / 5 / 10 | ||
| 用途 | 単GPU向けの定番構成 | ミドルレンジ(デュアルGPU) | ハイエンド OC / マルチGPU |
nVIDIA nForce 500 / 700 シリーズ(AM2 / AM2+ / 2006-2009)
nForce は K8 世代で強い存在感を持っていましたが、K10 世代では徐々に縮小。 それでも nForce 500 / 700 シリーズ は AM2 / AM2+ 向けに提供され、 SLI 対応や豊富な RAID 機能により一定の人気を維持しました。
| チップセット | nForce 520 / 560 | nForce 570 / 590 SLI | nForce 750a / 780a |
|---|---|---|---|
| 対応ソケット | AM2 | AM2 | AM2+ |
| 内蔵 GPU | × | × | ○(GeForce 8系 IGP / Hybrid SLI) |
| PCI Express | PCIe 1.0 x16 | PCIe 1.0 x16 ×2(SLI) | PCIe 2.0 x16 ×2(SLI) |
| USB | USB 2.0 × 8 | USB 2.0 × 10 | USB 2.0 × 12 |
| SATA | SATA-300 | SATA-300(RAID対応) | SATA-300(RAID対応) |
| RAID | RAID 0 / 1 | RAID 0 / 1 / 5 / 10 | RAID 0 / 1 / 5 / 10 |
| 用途 | エントリー向け | ミドルレンジ(SLI対応) | ミドル〜ハイエンド(SLI / Hybrid SLI) |
K10 世代では AMD 純正チップセットが主流となり、nForce はこの世代を最後に チップセット市場から姿を消していきました。
AMD 8 シリーズ(FM2+ / APU / 2013-2015)
AMD 8 シリーズは FM2+(Kaveri / Godavari) 向けのチップセットで、 APU 内蔵 GPU を活かした省電力 PC・小型 PC 向けとして人気が高かったシリーズです。
| チップセット | A88X | A78 | A68H |
|---|---|---|---|
| 対応ソケット | FM2+ | FM2+ | FM2+ |
| 内蔵 GPU | APU 側に統合(Radeon R7 / R5) | ||
| PCI Express | PCIe 3.0 x16 ×1 | PCIe 3.0 x16 ×1 | PCIe 3.0 x16 ×1 |
| USB | USB 3.0 × 4 | USB 3.0 × 4 | USB 3.0 × 2 |
| SATA | SATA-600 × 8 | SATA-600 × 6 | SATA-600 × 4 |
| RAID | ×(RAID 非対応) | ||
| 用途 | ハイエンド APU / 拡張性重視 | ミドルレンジ | 省電力・廉価 |
サードパーティ製チップセットはどうなったのか
Athlon XP(K7)〜 Athlon 64(K8)時代には、VIA・SiS・nVIDIA・ATI・ALi(ULi)といった 多くのサードパーティがチップセット市場に参入していました。 しかし、Phenom(K10)以降は AMD 純正チップセットが主流となり、 サードパーティ製チップセットは徐々に姿を消していきます。
VIA:K7時代の主力 → K8後期で撤退
VIA は K7 世代で最も広く採用されたチップセットメーカーで、 KT333 / KT400 / KT600 などが自作市場を支えていました。 K8 世代でも K8T800 / K8T890 を投入しましたが、 PCI Express 対応の遅れ と nForce4 の台頭 によりシェアを失います。
2006 年の AM2 世代を最後に、VIA は事実上チップセット市場から撤退しました。
SiS:低価格帯を支えたが、K8世代で終焉
SiS は低価格マザーボード向けに多く採用され、K7 では SiS745 / 746FX / 748 が人気でした。 K8 世代でも SiS755 / 760 / 756 を投入しましたが、 性能面で nForce・ATI に大きく劣る ことが決定的となり、 2005 年頃を境に新製品が途絶えます。
その後は組み込み向けチップに事業をシフトし、PC向けチップセットから撤退しました。
ALi(後の ULi):互換性の高さで評価 → nVIDIA に買収され消滅
ALi は K7 世代で Aladdin シリーズを展開し、互換性の高さで一定の評価を得ていました。 K8 世代では M1689 / M1695 / M1697 を投入し、 特に M1689 は「隠れた名チップセット」として自作ユーザーに支持されました。
しかし 2005 年末に nVIDIA に買収され、ULi ブランドは 2006 年に消滅。 以後、独立したチップセットメーカーとしての ALi/ULi は市場から姿を消しました。
nVIDIA:nForce2 / nForce4 の黄金期 → 法的問題で撤退
nVIDIA は K7 の nForce2、K8 の nForce3 / nForce4 で 圧倒的な人気を誇り、特に nForce4 SLI はハイエンド市場を席巻しました。
しかし 2007 年以降、Intel とのライセンス問題により Intel向けチップセットの開発が不可能 となり、 AMD向けも徐々に縮小。 2009 年の nForce 980a(AM3対応)を最後に、チップセット市場から撤退しました。
ATI(後にAMD統合):Radeon Xpress → AMD純正へ吸収
ATI は Radeon Xpress 200 / 200M で高性能 IGP を実現し、 K8 世代では nForce と並ぶ存在でした。
しかし 2006 年に AMD が ATI を買収したことで、 ATI製チップセットは AMD純正チップセットとして統合 されます。
その後の 690G → 780G → 880G → 890GX → 990FX はすべて ATI 技術をベースにした AMD純正チップセットとなりました。
なぜサードパーティ製チップセットは消えたのか
- CPU側にメモリコントローラが統合され、差別化が難しくなった
- HyperTransport / QPI / DMI などのライセンスが厳格化
- PCI Express / SATA / USB などの統合が進み、チップセットの役割が縮小
- Intel・AMD が自社チップセットを強化し、外部メーカーの余地が消えた
- nVIDIA は法的問題、VIA・SiS は技術力不足で撤退
- ALi(ULi)は買収により消滅
最終的な結論
K7〜K8 時代に存在したサードパーティ製チップセットは、 技術統合と市場の変化により、2009 年頃までにほぼすべて姿を消しました。 現在の AMD プラットフォームは、ATI 技術を継承した AMD純正チップセット(Aシリーズ / 7xx / 8xx / 9xx) が中心となっています。