Athlon 64(K8)世代では、メモリコントローラが CPU に統合されたことで、 チップセットの役割は大きく変化しました。K7 時代のようにメモリ帯域で 性能差が出ることは少なくなり、代わりに HyperTransport 帯域・AGP/PCI Express・ SATA/USB などの I/O 機能 がチップセットの差別化ポイントとなりました。

K8 世代のチップセットは主に VIA・nVIDIA・SiS・ATI・ALi(ULi) の 5 社が提供しており、それぞれが異なる特徴を持っていました。 ここでは各メーカーの代表的な K8 チップセットをまとめます。

VIA K8T800 / K8T800 Pro /K8M800

VIA の K8 シリーズは、Athlon 64(K8)初期のプラットフォームを支えた重要なチップセット群です。 K8 アーキテクチャではメモリコントローラが CPU に統合されたため、 チップセット側は主に I/O と AGP、HyperTransport の帯域設計が性能を左右しました。

K8T800 / K8T800 Pro は、当時のマザーボードメーカーから高い評価を受けた安定志向のチップセットです。 特に K8T800 Pro は Socket 939 に対応し、HyperTransport 1GHz をサポートした上位モデルで、 nForce3 が登場するまでの間、ハイエンド構成でもよく採用されていました。

一方で K8M800 は統合グラフィックス(UniChrome Pro)を搭載した廉価版で、 省電力・低価格の OEM 向け PC に多く採用されました。 3D 性能は控えめでしたが、動画再生支援や 2D 描画は十分で、 オフィス用途ではコストパフォーマンスの高さが光りました。

VIA の K8 シリーズは総じて「互換性の高さ」「安定性」「癖のなさ」が特徴で、 特に Linux や自作サーバー用途では nForce 系よりも好まれる傾向がありました。 ただし、SATA コントローラの性能や RAID 周りは nForce3/4 に一歩譲る場面もあり、 ハイエンド志向のユーザーは nVIDIA 製を選ぶケースが増えていきます。

それでも、K8T800 系は Athlon 64 初期の市場を支えた重要な存在であり、 当時のレビューでも「安定性なら VIA」「性能なら nForce」という評価が定番でした。

チップセット K8T800 Pro K8T800 K8M800
対応ソケット Socket 939 Socket 754 / 940 Socket 754
対応CPU Athlon 64 / Athlon 64 FX Athlon 64 / Opteron 1xx Athlon 64 / Sempron(K8)
HyperTransport 1GHz 1GHz 800MHz
AGP AGP 8X
内蔵グラフィックス × × ○(UniChrome Pro)
USB USB 2.0 × 8
IDE ATA/133 × 2
Serial ATA SATA-150 × 2

nVIDIA nForce3 150 / nForce3 250

nForce3 は Athlon 64 世代で最も人気の高かったチップセットのひとつで、 特に nForce3 250 は SATA・USB 2.0 の強化により完成度が高まり、 自作ユーザーから高い支持を得ました。

nForce3 は AGP 世代の K8 チップセットとして完成度が高く、 ハイエンド構成では VIA より nForce が選ばれる傾向が強くなりました。

チップセット nForce3 150 nForce3 250
対応ソケット Socket 754 / 940 Socket 754 / 939
対応CPU Athlon 64 / Opteron 1xx Athlon 64 / Athlon 64 FX / Sempron(K8)
HyperTransport 800MHz
AGP AGP 8X
内蔵グラフィックス ×
USB USB 2.0 × 6 USB 2.0 × 8
IDE ATA/133 × 2
Serial ATA × SATA-150 × 4

ALi(ULi) M1689 / M1695 / M1697

ALi(後の ULi)は、K8 世代で高い評価を受けたサードパーティ製チップセットメーカーです。 特に M1689 は AGP 世代の隠れた名チップセットとして知られ、 高い互換性と安定性から自作ユーザーに支持されました。

その後、ULi は M1695 / M1697 で PCI Express に対応し、 AGP と PCI Express を同時に搭載できる柔軟な構成が特徴でした。 この独自性が評価され、2006 年に NVIDIA に買収されます。

チップセット M1689 M1695 M1697
対応ソケット Socket 754 / 939 Socket 939 Socket 939
対応CPU Athlon 64 / Sempron(K8) Athlon 64 / Athlon 64 X2 Athlon 64 / Athlon 64 X2
HyperTransport 800MHz 1GHz 1GHz
GPUインターフェイス AGP 8X PCI Express x16 + AGP 8X(同時搭載可) PCI Express x16
USB USB 2.0
SATA SATA-150 SATA-150 SATA-300(RAID対応)

ULi のチップセットは「癖がなく安定」「互換性が高い」と評価され、 特に M1689 は AGP 世代の名作として知られています。 M1695 の AGP + PCIe 同時搭載は他社にない特徴でした。

ATI Radeon Xpress 200 / 200M

ATI(後に AMD に統合)は、K8 世代で Radeon Xpress 200 を投入し、 高性能な統合グラフィックスを武器に市場へ参入しました。 DirectX 9 対応の IGP を搭載し、当時の VIA や SiS の統合 GPU を大きく上回る性能を持っていました。

チップセット Radeon Xpress 200 Radeon Xpress 200M
対応ソケット Socket 754 / 939 Socket 754(モバイル)
対応CPU Athlon 64 / Athlon 64 X2 / Sempron(K8) Mobile Athlon 64 / Mobile Sempron
GPU Radeon X300 相当(DX9) Radeon X300 相当(DX9)
PCI Express PCI Express x16 PCI Express x16(外部GPU非対応モデルあり)
メモリ DDR / DDR2(モデルにより異なる) DDR / DDR2
SATA SATA-150 SATA-150

Radeon Xpress 200 は、K8 世代で最も高性能な統合 GPU を持つチップセットとして人気を集め、 OEM PC やノート PC で広く採用されました。後に AMD が ATI を買収し、 この系譜は AMD 690G → 780G → 880G → 890GX へと発展していきます。

SiS 745 / 746 / 746FX / 748

SiS の K8 世代チップセットは主に低価格帯向けで、 AGP 8X や DDR400 に対応した SiS746FX / SiS748 が中心となりました。 性能は VIA や nForce に劣るものの、OEM PC での採用が多く、 コスト重視の構成で一定の存在感を持っていました。

チップセット SiS745 SiS746 SiS746FX SiS748
FSB(対応 CPU) 200/266MHz 200/266MHz 200/266/333MHz 266/333/400MHz
メモリインターフェイス DDR SDRAM
サポートメモリ DDR 200/266/333 DDR 200/266/333 DDR 266/333/400 DDR 266/333/400
メモリ帯域 2.7GB/sec 2.7GB/sec 3.2GB/sec 3.2GB/sec
最大メモリ容量 3GB
AGP AGP 4X AGP 8X
内蔵グラフィックス ×
USB USB 1.1 USB 2.0
IDE ATA/100 ATA/133
IEEE 1394

SiS の K8 チップセットは低価格帯を中心に採用されましたが、 性能面では VIA や nForce に及ばず、K8 世代後期には市場から姿を消していきました。