Intel Core 世代(Nehalem〜Rocket Lake)は、2008 年の Nehalem(初代 Core i7)から 2021 年の Rocket Lake まで、 約 13 年間にわたって展開された長期アーキテクチャです。メモリコントローラの CPU 内蔵化、QPI / DMI の導入、 PCI Express の世代更新、DDR3 / DDR4 への移行など、PC アーキテクチャの基盤が大きく変化した時代でもあります。

本ページでは Nehalem → Sandy/Ivy → Haswell → Skylake → Coffee Lake → Rocket Lake の主要チップセットをまとめ、 Intel Core 世代の進化を体系的に整理します。

Intel Core 世代の大まかな分類

Core 世代は 13 年以上続いたため、アーキテクチャの特徴に基づいて 3 つの緩いフェーズに分類できます。世代ごとの詳細は後続セクションで解説します。

1. 初期フェーズ(Nehalem / Sandy Bridge / Ivy Bridge)

  • Nehalem(2008) -- メモリコントローラの CPU 内蔵化、QPI 導入、LGA1366 / LGA1156 の分化
  • Sandy Bridge(2011) -- CPU + GPU の統合強化、リングバス採用、LGA1155 へ統一
  • Ivy Bridge(2012) -- 22nm Tri-Gate(FinFET)化、PCIe 3.0 対応

2. 中期フェーズ(Haswell / Broadwell / Skylake)

  • Haswell(2013) -- VRM の CPU 内蔵化(FIVR)、AVX2、LGA1150
  • Broadwell(2014) -- 14nm 化、デスクトップは限定的
  • Skylake(2015) -- DDR4 への本格移行、チップセットの DMI 3.0 化、LGA1151

3. 後期フェーズ(Kaby Lake / Coffee Lake / Comet Lake / Rocket Lake)

  • Kaby Lake(2017) -- 14nm 最適化、Optane 対応
  • Coffee Lake(2017-2019) -- 6 コア / 8 コア化、LGA1151 v2
  • Comet Lake(2020) -- 10 コア化、LGA1200
  • Rocket Lake(2021) -- Cypress Cove(Sunny Cove バックポート)、PCIe 4.0 対応

この分類により、Core 世代の長期的な変化(メモリ規格、PCIe 世代、ソケット、電源設計など)が把握しやすくなります。 以下では各世代ごとにチップセットの特徴と一覧表を掲載します。

Nehalem 世代(X58 / P55)

Nehalem は、メモリコントローラを CPU に統合し、QPI(QuickPath Interconnect)を導入した大転換期です。 LGA1366 と LGA1156 の 2 ソケット体制で展開され、ハイエンドとメインストリームが明確に分かれました。

X58(LGA1366・ハイエンド)

  • トリプルチャネル DDR3 に対応し、Core i7 900 番台の性能を最大限に引き出すハイエンド向け。
  • QPI による高速接続、PCI Express レーンの豊富さから、ワークステーション用途にも採用。

P55(LGA1156・メインストリーム)

  • メモリコントローラと PCI Express を CPU に統合し、チップセットは実質 1 チップ構成に。
  • Core i5 / i7(800 番台)向けの主力プラットフォームとして普及。

Intel 5 シリーズ(Ibex Peak / 2009)

Intel 5 シリーズは、初めてノースブリッジ機能(メモリコントローラ・PCIe)を CPU 側へ統合し、 チップセットはサウスブリッジ(PCH)単体構成となった世代です。 LGA1156 プラットフォームで、Core i7-800 / i5-700 / i5-600 / i3-500 をサポートします。

チップセット P55 H55 H57 Q57
ソケットLGA1156LGA1156LGA1156LGA1156
内蔵 GPU 対応×
PCI ExpressCPU 直結 ×16CPU 直結 ×16
SATA6666
USB 2.014121414
用途 メインストリーム メインストリーム(iGPU対応) 上位メインストリーム ビジネス / エンタープライズ

Sandy / Ivy Bridge 世代(Z68 / Z77)

Sandy Bridge(2011)と Ivy Bridge(2012)は LGA1155 を採用し、統合 GPU の強化と電力効率の向上が特徴です。 チップセットは Z68 → Z77 と進化し、SSD キャッシュや PCIe 3.0 などが導入されました。

Z68(Sandy Bridge)

  • SSD キャッシュ(Intel Smart Response Technology)に対応。
  • 内蔵 GPU とディスクリート GPU の切り替え(Lucid Virtu)に対応。

Z77(Ivy Bridge)

  • PCI Express 3.0 に対応し、GPU 性能を強化。
  • USB 3.0 をネイティブサポート。

Intel 6 シリーズ(Cougar Point / 2011)

Sandy Bridge 世代(LGA1155)向けチップセット。PCIe・メモリコントローラは CPU 側に統合され、 チップセットは PCH として機能。SATA 6Gbps を初サポートした世代です。

チップセット Z68 P67 H67 H61
ソケットLGA1155LGA1155LGA1155LGA1155
内蔵 GPU×
OC(倍率変更)××
SATA 6Gbps2220
USB 3.0×(非対応)
用途 ハイエンド ハイエンド(GPU特化) メインストリーム エントリー

Intel 7 シリーズ(Panther Point / 2012)

Ivy Bridge / Sandy Bridge 両対応の LGA1155 チップセット。 USB 3.0 をネイティブサポートした初の Intel チップセットです。

チップセット Z77 Z75 H77 B75
ソケットLGA1155LGA1155LGA1155LGA1155
内蔵 GPU
OC(倍率変更)××
USB 3.04 ポート(ネイティブ)
SATA 6Gbps2121
用途 ハイエンド 上位メインストリーム メインストリーム エントリー

Haswell 世代(Z87 / Z97)

Haswell(2013)は LGA1150 を採用し、電力効率と内蔵 GPU が大幅に強化されました。 チップセットは Z87 → Z97 と進化し、M.2 / SATA Express など次世代ストレージ規格が登場します。

Z87

  • USB 3.0 / SATA 6Gbps を全ポートでサポート。
  • オーバークロック耐性が高く、自作 PC で人気。

Z97

  • M.2 / SATA Express をサポートし、NVMe SSD 時代の基盤を形成。
  • Broadwell(5th Gen Core)にも対応。

Intel 8 シリーズ(Lynx Point / 2013)

Haswell(LGA1150)向けチップセット。Z87 は USB 3.0 / SATA 6Gbps を全ポートでサポートし、 自作 PC 向けに高い人気を誇った世代です。H87 / B85 / H81 は用途別に機能が最適化され、 メインストリームからエントリーまで幅広い構成をカバーしました。

チップセット Z87 H87 B85 H81
ソケットLGA1150LGA1150LGA1150LGA1150
OC(倍率変更)×××
USB 3.06642
SATA 6Gbps6642
PCIe レーン(PCH)8886
用途 ハイエンド 上位メインストリーム メインストリーム エントリー

Intel 9 シリーズ(Wildcat Point / 2014)

Haswell Refresh / Devil's Canyon(LGA1150)向けチップセット。 M.2 / SATA Express を初サポートし、ストレージ性能が大幅に向上した世代です。

チップセット Z97 H97
ソケットLGA1150LGA1150
M.2 / SATA Express
OC(倍率変更)×
USB 3.066
SATA 6Gbps66
用途 ハイエンド メインストリーム

Intel 100 シリーズ(Skylake / 2015)

Skylake(LGA1151)向けチップセット。DDR4 メモリを初サポートし、 Z170 は PCIe レーン数が多く拡張性に優れた。

チップセット Z170 H170 B150 H110
ソケットLGA1151LGA1151LGA1151LGA1151
OC(倍率変更)×××
PCIe レーン(PCH)201686
USB 3.010864
SATA 6Gbps6664
用途 ハイエンド 上位メインストリーム メインストリーム エントリー

Skylake 世代(Z170 / Z270)

Skylake(2015)は LGA1151 を採用し、DDR4 メモリに移行した世代です。 チップセットは Z170 → Z270 と進化し、PCIe レーン数の増加やストレージ周りの強化が進みました。

Z170

  • DDR4 メモリをサポートし、帯域が大幅に向上。
  • PCIe レーンが増加し、M.2 / NVMe SSD の普及を後押し。

Z270

  • Optane Memory に対応し、キャッシュ用途の高速ストレージが利用可能に。
  • Kaby Lake(7th Gen Core)に最適化。

Intel 200 シリーズ(Kaby Lake / 2017)

Kaby Lake(LGA1151)向けチップセット。Z270 は PCIe レーン数が増加し、 M.2 SSD の普及を後押しした世代。

チップセット Z270 H270 B250
ソケットLGA1151LGA1151LGA1151
OC(倍率変更)××
PCIe レーン(PCH)242012
M.2 / NVMe
USB 3.01086
用途 ハイエンド メインストリーム エントリー

Intel 300 シリーズ(Coffee Lake / 2018)

Coffee Lake(LGA1151 v2)向けチップセット。6コア・8コア CPU に対応し、 Z390 では USB 3.1 Gen2 や CNVi(Intel Wi-Fi)をサポート。

チップセット Z390 Z370 H370 B360 H310
ソケットLGA1151 v2LGA1151 v2LGA1151 v2LGA1151 v2LGA1151 v2
OC(倍率変更)×××
USB 3.1 Gen26×42×
M.2 / NVMe
LANGigabit Ethernet
用途 ハイエンド ハイエンド(初期) 上位メインストリーム メインストリーム エントリー

Coffee Lake 世代(Z370 / Z390)
Coffee Lake(2017)は LGA1151 v2 を採用し、6 コア / 8 コア CPU が登場した世代です。 チップセットは Z370 → Z390 と進化し、USB 3.1 Gen2 や Wi-Fi の統合など、プラットフォームの完成度が高まりました。

  • Z370:6 コア CPU(Core i7-8700K)に対応し、性能が大幅に向上。Z270 からのマイナーアップデートだが、OC 耐性が高い。
  • Z390:USB 3.1 Gen2 / CNVi Wi-Fi を統合し、機能面が強化。8 コア CPU(Core i9-9900K)に対応し、LGA1151 最終世代を支えた。

Intel 400 シリーズ(Comet Lake / 2020)

Comet Lake(第10世代)向けの LGA1200 チップセット。 14nm 世代の最終形で、Z490 は後に PCIe 4.0 対応マザーボードも登場した。

チップセットZ490B460H410
ソケットLGA1200LGA1200LGA1200
OC(倍率変更)××
PCIe 4.0一部マザーで対応××
M.2 / NVMe2スロット1スロット1スロット
USB 3.2 Gen2×
用途ハイエンドメインストリームエントリー

Intel 500 シリーズ(Rocket Lake / 2021)

Rocket Lake(第11世代)向けの LGA1200 チップセット。 PCIe 4.0 を初サポートし、Z590 は高速 NVMe SSD の性能を最大限に引き出せる構成となった。

チップセットZ590B560H510
ソケットLGA1200LGA1200LGA1200
OC(倍率変更)××
PCIe 4.0CPU直結 ×16CPU直結 ×16×
M.2 / NVMe3スロット2スロット1スロット
USB 3.2 Gen2x2×
用途ハイエンドメインストリームエントリー

主要チップセット一覧

世代 チップセット メモリ PCI Express ソケット 対応 CPU 特徴
Nehalem
(2008-2010)
X58 DDR3(トリプルチャネル) PCIe 2.0(多数) LGA1366 Core i7 900 QPI採用、ハイエンド向け
P55 DDR3(デュアル) PCIe 2.0(CPU直結) LGA1156 Core i5 / i7 800 CPUにPCIe/メモリ統合、主力モデル
Sandy / Ivy
(2011-2012)
Z68 DDR3 PCIe 2.0 LGA1155 Sandy Bridge SSDキャッシュ対応、Virtu対応
Z77 DDR3 PCIe 3.0(CPU) LGA1155 Ivy Bridge USB3.0ネイティブ対応
Haswell
(2013-2014)
Z87 DDR3 PCIe 3.0 LGA1150 Haswell SATA6Gbps全ポート、OC耐性高
Z97 DDR3 PCIe 3.0 LGA1150 Haswell / Broadwell M.2 / SATA Express対応
Skylake
(2015-2016)
Z170 DDR4 PCIe 3.0(レーン増加) LGA1151 Skylake NVMe普及の基盤、拡張性大
Z270 DDR4 PCIe 3.0 LGA1151 Kaby Lake Optane Memory対応
Coffee Lake
(2017-2019)
Z370 DDR4 PCIe 3.0 LGA1151 v2 Coffee Lake 6コア対応、OC向け
Z390 DDR4 PCIe 3.0 LGA1151 v2 Coffee Lake Refresh USB3.1 Gen2 / CNVi Wi-Fi
Comet Lake
(2020)
Z490 DDR4 PCIe 3.0(※一部4.0対応) LGA1200 Comet Lake 10コア対応、Z490は後にPCIe4.0対応板も登場
Rocket Lake
(2021)
Z590 DDR4 PCIe 4.0(CPU直結) LGA1200 Rocket Lake PCIe4.0対応、NVMe性能向上

次の世代:Alder Lake / Raptor Lake(LGA1700)について

Rocket Lake(第11世代)以降の Intel プロセッサは、P コアと E コアを組み合わせた ハイブリッドアーキテクチャへと大きく転換しました。DDR5 や PCI Express 5.0 に対応し、 チップセット構造も刷新されているため、本ページで扱う Core 世代(Nehalem〜Rocket Lake)とは アーキテクチャ上の連続性がありません。

第12世代以降の LGA1700 プラットフォーム(Alder Lake / Raptor Lake)については、 変化が大きいため別ページにまとめています。詳細はこちらをご覧ください。

Intel LGA1700 チップセット(Alder Lake / Raptor Lake)まとめ