Athlon XP(K7)世代では、メモリコントローラがチップセット側に存在していたため、 FSB(Front Side Bus)とメモリ帯域 が性能を大きく左右していました。 そのため、チップセットの出来が CPU の性能を引き出す上で極めて重要であり、 各社が独自のメモリ制御技術や AGP 最適化を競い合っていました。

この時代のチップセット市場は非常に活発で、 VIA・nVIDIA・SiS・ATI・ALi(後の ULi) といった 多くのサードパーティメーカーが参入し、個性豊かな製品を展開していました。 ここでは Athlon XP(K7)向けの代表的なチップセットをまとめます。

Athlon XP 用チップセット

VIA の Athlon XP(K7)向けチップセットは、KT333 の後継として登場した KT400 / KT400A / KT600 の3シリーズが中心となります。 いずれも Socket A(Socket 462) に対応し、 Athlon XP・Duron・Sempron(K7版)といった CPU をサポートしていました。

K7 世代ではメモリコントローラがチップセット側に存在するため、 FSB とメモリ帯域のバランス が性能に直結します。 VIA はこの世代で「安定性」「互換性」「癖のなさ」を武器に、 OEM PC や廉価マザーボード市場で大きなシェアを持っていました。

■ KT400:KT333 の AGP 8X 対応版

KT400 は名前こそ "400" ですが、実際には DDR400 に正式対応していない という 少し紛らわしい仕様でした。実質的には KT333 の改良版で、 AGP 8X8X V-Link(ノース・サウス間帯域強化)が追加されたモデルです。 メモリ帯域は DDR333 時で 2.7GB/sec と控えめで、ハイエンド用途にはやや物足りない性能でした。

■ KT400A:実質的な"真の KT400"

KT400A は KT400 の改良版で、内部アーキテクチャが見直され、 メモリコントローラの効率が大幅に改善 されました。 DDR400 にも正式対応し、帯域は 3.2GB/sec に向上。 これにより、KT400A はようやく Athlon XP の性能を引き出せるチップセットとなり、 当時のレビューでも「KT400 ではなく KT400A を選ぶべき」と評価されていました。

■ KT600:VIA K7 チップセットの完成形

KT600 は VIA の K7 世代で最も完成度の高いチップセットです。 DDR400 に正式対応し、メモリ帯域は 3.2GB/sec。 内部のメモリコントローラは KT400A の発展形で、安定性・互換性ともに高く、 Sempron(K7版) にも完全対応しています。

ただし、同時期に登場した nForce2(デュアルチャネル DDR) が 最大 6.4GB/sec の帯域を実現していたため、絶対性能では nForce2 に一歩及びませんでした。 そのため、自作ユーザーの間では 「性能なら nForce2、安定性なら VIA」 という評価が定番となっていました。

■ VIA の強み:互換性と安定性

VIA の K7 チップセットは、ハイエンド志向ではなかったものの、 癖がなく安定して動く という点で高く評価されていました。 特に以下の用途では VIA が好まれる傾向がありました。

  • OEM PC(メーカー製PC)
  • 低価格マザーボード
  • Linux やサーバー用途(nForce2 より安定)
  • 古い PCI カードとの互換性が必要な環境

Athlon XP 世代の VIA チップセットは、派手さはないものの、 「堅実で扱いやすい K7 プラットフォーム」 として 長く愛された存在でした。

チップセット KT400 / VT8235 KT400A / VT8237 KT600 / VT8237
対応ソケット Socket A(Socket 462)
対応CPU Athlon XP(FSB266/333)
Duron(Morgan)
Athlon XP(FSB266/333)
Duron / Sempron(K7)
Athlon XP(FSB266/333/400)
Sempron(K7)
FSB 266 / 333 MHz 266 / 333 / 400 MHz
メモリインターフェイス DDR SDRAM
サポートメモリ DDR 266 / 333 DDR 266 / 333 / 400
メモリ帯域 2.7 GB/sec 3.2 GB/sec
最大メモリ容量 4 GB
AGP AGP 8X
内蔵グラフィックス ×
USB USB 2.0
IDE ATA/133
IEEE 1394

nVIDIA 製チップセット(nForce2 シリーズ)

nForce2 は Athlon XP(K7)世代で最も高性能なチップセットとして知られ、 デュアルチャネル DDR による最大 6.4GB/sec のメモリ帯域を実現しました。 ノースブリッジは SPP(非IGP)IGP(内蔵GPU搭載) の2種類、 サウスブリッジは MCP / MCP-T の2種類が存在し、組み合わせによって 機能が変化する柔軟な構成が特徴です。

チップセット nForce2-ST(SPP) nForce2-GT(IGP)
FSB 200 / 266 / 333 MHz
サポートメモリ DDR 200 / 266 / 333 / 400(デュアルチャネル)
メモリ帯域 最大 6.4 GB/sec
最大メモリ容量 3 GB
AGP AGP 8X
内蔵グラフィックス × ○(GeForce4 MX 相当)
USB USB 2.0
IDE ATA/133
IEEE 1394 無(MCP) 有(MCP-T)

nForce2 の構成は、ノースブリッジ(SPP / IGP)とサウスブリッジ(MCP / MCP-T)の 組み合わせで決まり、MCP-T は IEEE 1394 や Dolby Digital リアルタイムエンコードに対応した 上位版として位置づけられていました。

また、nForce2 400 は FSB400 / DDR400 に対応した廉価版でシングルチャネル構成、 上位の nForce2 Ultra 400 はデュアルチャネルに対応し、 Athlon XP 3200+ などのハイエンド CPU と組み合わせて高い性能を発揮しました。

Athlon XP(K7)チップセット系譜図

Athlon XP(K7)世代は、Socket A(Socket 462)を採用し、FSB とメモリ帯域が性能を大きく左右しました。 チップセットは主に VIA・nVIDIA・SiS の3社が提供し、それぞれに特徴的な進化を遂げています。

系譜図(FSB・メモリ帯域の進化)

年代 チップセット FSB メモリ 帯域 特徴
2001〜2002 VIA KT266A / KT333
SiS745
200 / 266 MHz DDR 266 / 333 2.1〜2.7 GB/sec 初期のDDR世代。KT333が主流に。
2002〜2003 VIA KT400
SiS746
266 / 333 MHz DDR 266 / 333(DDR400は非公式) 2.7 GB/sec AGP 8X 対応。DDR400は未成熟。
2003 VIA KT400A
SiS746FX
266 / 333 MHz DDR 266 / 333 / 400 3.2 GB/sec メモリ効率改善。DDR400正式対応。
2003〜2004 VIA KT600
SiS748
266 / 333 / 400 MHz DDR 266 / 333 / 400 3.2 GB/sec VIA K7の完成形。Sempron対応。
2002〜2004 nForce2 / nForce2 Ultra 400 266 / 333 / 400 MHz DDR 266〜400(デュアルチャネル) 最大 6.4 GB/sec 最強のK7チップセット。性能は圧倒的。

このように、K7 世代は VIA が安定性、nForce2 が性能、SiS が低価格 という 明確な住み分けがありました。特に nForce2 Ultra 400 はデュアルチャネル DDR により 6.4GB/sec の帯域を実現し、Athlon XP の性能を最大限に引き出した代表的チップセットです。

Athlon 64(K8)チップセット系譜図

Athlon 64(K8)世代では、メモリコントローラが CPU に統合され、 チップセットは主に I/O・AGP/PCI Express・SATA・USB などを担当する構造へと変化しました。 K7 時代のような「メモリ帯域差」は小さくなり、代わりに HyperTransport(HT)帯域・SATA 世代・PCI Express 対応 が チップセットの世代を分ける指標となりました。

系譜図(AGP → PCI Express、HT800 → HT1000 の流れ)

年代 チップセット 対応ソケット HT帯域 GPUインターフェイス 特徴
2003 VIA K8T800
nForce3 150
SiS755
754 / 940 HT 600〜800MHz AGP 8X 初期の Athlon 64 プラットフォーム。
K8T800 は安定性、nForce3 は性能で人気。
2004 VIA K8T800 Pro
nForce3 250 / 250Gb
SiS760(IGP)
754 / 939 / 940 HT 1GHz AGP 8X HT1GHz 対応で帯域が拡大。
nForce3 250 は SATA・GbE 内蔵で完成度が高い。
2004〜2005 ATI Radeon Xpress 200
VIA K8T890
SiS756
754 / 939 HT 1GHz PCI Express x16 PCI Express 対応の第1世代。
Radeon Xpress 200 は DX9 IGP で高性能。
2005 nForce4 / Ultra / SLI 939 / 754 HT 1GHz PCI Express x16(SLI対応) K8 チップセットの完成形。
SATA-II、PCIe、SLI に対応しハイエンド市場を席巻。
2006 nForce4 AM2
ATI Radeon Xpress 1100 / 1150
VIA K8T900
AM2 HT 1GHz PCI Express x16 DDR2 メモリ対応の AM2 世代へ移行。
K8 最終期のチップセット群。
2007 AMD 690G / 690V(ATI RS690)
nForce 500 / 600 シリーズ
AMD 740 / 760 / 770 / 780G / 790X / 790FX
AM2 / AM2+ HT 3.0(AM2+) DDR2 Phenom(K10)登場。
HT3.0・PCIe 2.0・高性能IGP(780G)など大幅刷新。
2009 AMD 785G / 880G / 890GX / 890FX AM3 HT 3.0 DDR3 DDR3 メモリ対応。
Phenom II / Athlon II の主力プラットフォーム。

このように、Athlon 64(K8)世代は AGP → PCI Express、HT800 → HT1000、SATA → SATA-II といった I/O 周りの進化が中心となりました。 特に nForce4 は SLI・SATA-II・PCI Express を統合した完成度の高さから、 K8 世代を代表するチップセットとして広く普及しました。

このように、K8 から K10 への移行は DDR → DDR2 → DDR3、HT800 → HT1000 → HT3.0、AGP → PCIe → PCIe 2.0 といった I/O とメモリ周りの進化が中心となりました。 特に AM2+ / AM3 世代の AMD 7xx シリーズは、Phenom / Phenom II の性能を最大限に引き出す 完成度の高いチップセットとして広く普及しました。

Phenom / Phenom II / Athlon II 対応チップセット一覧

Phenom(K10)および Phenom II / Athlon II(K10.5)は、AM2 / AM2+ / AM3 の3世代にまたがって 広い互換性を持っています。ここでは AMD 純正チップセットと nForce 系を中心に、 各 CPU がどのチップセットで動作するかを一覧化しています。

対応表(CPU → チップセット)

CPU 対応ソケット 対応チップセット 備考
Phenom(K10) AM2 / AM2+ AMD 690G / 690V
AMD 740 / 760 / 770 / 780G / 780V / 790X / 790FX
nForce 520 / 560 / 570 / 590
nForce 630a / 730a
AM2 では HT3.0 非対応(HT1.0 動作)。
AM2+ で HT3.0 / PCIe 2.0 対応。
Phenom II(K10.5) AM2+ / AM3 AMD 740 / 760 / 770 / 780G / 785G / 790X / 790FX
AMD 880G / 890GX / 890FX
nForce 630a / 730a / 750a / 980a(SLI)
AM2+ では DDR2、AM3 では DDR3 に対応。
AM3 CPU は AM2+ マザーで動作する場合あり(BIOS要)。
Athlon II(K10.5) AM2+ / AM3 AMD 740 / 760 / 770 / 780G / 785G / 790X / 790FX
AMD 880G / 890GX / 890FX
AMD 970 / 990X / 990FX(AM3+)
nForce 630a / 730a
Phenom II とほぼ同じ互換性。
AM3+ マザーでも多くが動作(BIOS対応)。

チップセット世代別の対応状況

チップセット世代 代表チップセット 対応CPU メモリ
AMD 6xx(K8末期) 690G / 690V Phenom(AM2) DDR2
AMD 7xx(K10初期) 740 / 760 / 770 / 780G / 790X / 790FX Phenom / Phenom II / Athlon II DDR2(AM2+)
AMD 8xx(K10.5中期) 880G / 890GX / 890FX Phenom II / Athlon II DDR3(AM3)
AMD 9xx(K10.5後期) 970 / 990X / 990FX Phenom II / Athlon II DDR3(AM3+)

このように、Phenom / Phenom II / Athlon II は AM2 → AM2+ → AM3 → AM3+ と 長期にわたって互換性が維持されており、AMD プラットフォームの柔軟性を象徴する世代となりました。 特に AMD 7xx / 8xx / 9xx シリーズは、Phenom II / Athlon II の性能を最大限に引き出す 完成度の高いチップセットとして広く普及しました。