『迷い猫オーバーラン!』の作者が語るアニメ化の微妙な話
2010年4月にTVアニメ化したライトノベル『迷い猫オーバーラン!』の著者である松智洋さんが作家にとってのメディアミックスの功罪を語った。アニメ化は必ずしもうれしくない!?――作家とメディアミックスの微妙な関係より
それによると、ライトノベル作家は「アニメがこけたら、僕の小説も絶対こける」と考えている。作家がメディアミックスに持つ関心は「自分の作品をどういう風に伸ばしてくれるか、大事にしてくれるか、楽しく面白く作ってくれるか」。
そういったことを考えている為、提案されてきた企画書が「制作会社:京都アニメーション」などと書いてあったら、原作者は即OKとハンコを押すが、現実は企画書に書いてある制作会社やスタッフの過去の作品などを調べてもまったく分からない。結果的に編集部にお任せするしかない。
また、現在は原作準拠のアニメが主流になっているので、アニメがヒットするかどうかは原作にも責任が出てくる。小説の内容の出来不出来は作者が自分で責任を負えるが、アニメの出来不出来は責任を負えない。しかし、世間ではアニメの出来不出来=原作の出来不出来。アニメの完成度は作家にとって死活問題となる。
アニメがすごくつまらなかった場合、原作小説や同じ作者の小説が売れなくなる。そして、原作者の心が折れる。アニメが原作よりも面白かった場合は逆にプレッシャーがかかって、原作者の心が折れる。
他にもアニメが終了すると「アニメの終了=原作の終了」。アニメ化で一時的に販売部数が伸びるものの、アニメ終了後に部数が伸びることは稀。作品の途中でアニメ化したら、作品自体の寿命も短くするというデメリットが発生するようだ。
もし、アニメも原作も無事に終了したとしても、ヒットした作品の次回作として読者の期待のハードルが上がり、作家自身も次ぎもアニメ化されるような作品を書かないと……とハードルが上がる。そんな中、アニメ化による収入増で貯金があり、考える時間も生まれ、良い作品を書くために時間をかけてしまう=創作活動の停滞。
このアニメ化の後に作家が新作を発表するのが難しくなる現象を松智洋さんはアニメ化の最大のデメリットと評している。
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