富野由悠季ロングインタビュー
先日、BS2で行われた機動戦士ガンダムの9時間30分に渡る放送の中に、ガンダムの原作・監督である富野由悠季氏への1時間近いロングインタビューがあり、それをリアルタイムで視聴した。このロングインタビューについてはシャア専用ブログさんが文字起こしされているのでそちらを参照すると良いと思いますが、雑誌の制作者コメントと違い、テレビでの対話や話し合いというのはわかりにくいです。で、概ね、予想通りというか、おもちゃ会社が嫌いで、自分の作品が嫌いで、SEEDの話なんか振ってはいけない富野監督というのをよく分かった番組だと思った(笑
富野監督とは
富野監督という人は日本大学芸術学部映画科を卒業した後、マンガの神様、手塚治虫が創設したアニメ制作会社である虫プロに就職した人なんだけど、成績もわるかったし、僕程度の者が映画を作れないという形で入った人。もうこの辺から自分の作品けなしたりするのを納得してしまえるのだけれど、『鉄腕アトム』の演出を担当したりと今に続く、アニメの使い回し技法に深く携わってたりする。で、3年で退社後フリー。もう今の10代、20代にとっちゃ、『鉄腕アトム』だけでもビックリなのに『ムーミン』『巨人の星』も手がけてたりしてる偉い人。
ここで偉いとか言うと怒られるんだろうけど、昔は漫画なんて駄目なもの。アニメなんかさらに駄目なもの。という感覚があった。今だとゲームが叩かれて、最近は携帯に矛先が変わろうとしていると思うけど、新しい文化や新しい物というのは大体、叩かれる運命にあるので、当然だけど今では大学によっては漫画やアニメーションを取り扱ってるし、手塚治虫の作品は哲学とか、人間模様を鋭く描いた文学作品と言った地位を得ている。そういうアニメがよろしくない時代を経験した人にとってはやはり、当時のこと偉いとかそういうことを知らない人間に言われると腹が立つから、ガンダムをただ誉めまくったりする人に厳しいというのが、私なりの富野監督の見方。かと言って人間、誰しも自分の作品を非難されると気分がよろしくないので、誉めすぎずけなしすぎというさじ加減が微妙なので富野監督は怖いとか偏屈と思われてると理解してる。
で、話を戻すと1967年に虫プロ退職後の72年には手塚治虫原作の『海のトリトン』で初監督。75年にはスーパーロボット大戦でおなじみの『勇者ライディーン』の監督をするんですが、ライディーンっていうのはムー大陸がどうとか当時アニメ業界でタブーとされたオカルト要素が問題でゴタゴタがあり途中降板したり復帰したりという具合になってしまった。アニメは子供が見るものなのにオカルトなんてとんでもない。というのは会社的にも社会的にも正しかったと思うので、ライディーンのアニメ化自体が早すぎたと思われる。
77年には『無敵超人ザンボット3』
78年には『無敵鋼人ダイターン3』
この流れはガンダムファンに言わせればZガンダム→ZZガンダムの流れ。どちらもスパロボで常連だけど、ザンボット3はとにかく悲惨。アニメは子供向け、勧善懲悪がベースの昔のアニメで侵略者を倒したり、夢と希望を与える作品なんて思ってたら痛い目を見る。Zガンダムを超える悲惨さを誇り、ZガンダムやVガンダムを上回る「皆殺しの富野」の代表作の地位を得ている。よって、次のダイターン3は明るいシリーズになる。この辺がZガンダム→ZZガンダムというのと同じだと感じる。ラストまで明るくいけないのも同じ。
1979年『機動戦士ガンダム』
そして待望の『機動戦士ガンダム』が1979年に登場。ガンダムについてあれこれと書かずともこのサイトに足を運んでいる人なら知っているだろうし、自分よりよくご存じの方もいらっしゃるはずなので、深く触れないが、視聴率がよくなく、オモチャが売れなかったので打ち切られた。全52話予定だったものが全43話に変更。これについてはロングインタビューでも触れられていた。ガンダムじゃなくてガンボーイだったとか、機動戦士がどうとかモビルスーツがどうとか。キャラクターの名前については散々なこと仰っていた。シャアなんて名前が嫌いだ、主人公の名前をアムロにしたことを非難されまくったなど。そんな『機動戦士ガンダム』が放送終了後にガンプラがヒットして、81年に映画化し社会現象化。
TV版ガンダムと映画版ガンダムの間に『伝説巨神イデオン』なんていうまた形容しがたい作品があり、また打ち切られる羽目に合う。全43話予定が全39話に変更。でもまたも82年に映画化されることになる。
82年には『戦闘メカ ザブングル』
83年には『聖戦士ダンバイン』
84年には『重戦機エルガイム』
85年の『機動戦士Zガンダム』に至るまでに自分の好きなダンバインやエルガイムがあるのだけれど、ザブングルの頃から、スタッフとの軋轢が生じてたようだ。ロングインタビューには10年前は君臨してたけど今はやめたとあるので、怖いやり直しばかりさせる監督が君臨してた頃は評判が悪かっただろう。ダンバインの昆虫フォルムもさることながら、エルガイムのデザインも変わっていると思うが、エルガイムのキャラデザ・メカデザを担当しているのが、永野護。Zガンダムで百式、ハンブラビ、キュベレイといったMSをデザインします。この永野護氏の『ファイブスター物語』というエルガイムと似た世界というか全く同じというかちょっとその辺りコメントしづらい漫画があるのですが、マジお勧めです。ロボット好きの方なんかは一度、検索してロボットの格好良さを見ていただきたい次第。キャラクターも個性豊か過ぎるスケールの大きすぎる漫画。読み始める為の最大の障壁はキャラクターが少女漫画っぽいこと(苦笑) 連載はニュータイプですが、現在休載中です。
1985年『機動戦士Zガンダム』
『機動戦士ガンダム』の待望の続編『機動戦士Zガンダム』。この作品でエンディングに真っ先に名前が出たのが、カミーユではなくシャア・アズナブルなことから、カミーユじゃなくてシャアが主人公という見方もできます。ま、この辺はスターウォーズも同じで、初期三部作だけを見ればルーク・スカイウォーカーが主人公でダース・ベイダーは敵だけれど、今年放映された『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』までのエピソード1?3の新三部作はアナキン・スカイウォーカーがダークサイドに墜ち、ジェダイを裏切り、ダース・ベイダーになる話。でも、ここで振り返って欲しいのはエピソード6のタイトルが『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』であること。この時に帰還するのはダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカー。ラストではヨーダやオビワンと一緒にフォースとの一体化を果たして登場してますが、エピソード1?6ってのはアナキンが裏切って帰ってくるまでを描いたアナキンストーリー。『機動戦士ガンダムシリーズ』も似たようなものでシャアストーリーと言えます。でも、作品が暗すぎて急遽、続編のZZガンダムで明るい作品にしようってことで、完全なシャアの話にはならなかったわけですが……私はZガンダムが大好きな人間なので一昔前の富野監督には怒られるタイプの人間なんですよ。富野監督はZガンダムの劇場版を作る為に見直す前まで、Zガンダムが大嫌いとご自分で言ってましたから。見直したら思ったほど悪くなかったそうで、今では劇場三部作の『新訳』制作公開してるので怒られずに済むかなって思ってるんですが、今は怒るのかどうか……。
1986年『機動戦士ガンダムZZ』
当初は主役のガンダムを永野護がデザインするという話もあったので、ランスを持ったZZガンダムと呼ばれていたかも知れないガンダムのイラストがあったりするのですが、Zガンダムの変形に続いて変形・合体をするZZガンダムに決まり、永野護版ZZガンダムというものは無くなりました。また、主役も暗く陰鬱になってしまったZガンダムにうって変わり、明るい少年少女達が主人公の異色のガンダムとなった。大体、戦争してるのに明るかったら、ギャグアニメにしか見えないのが困りものであるし、最大の問題は今までアムロやカミーユと言った少年が初めてガンダムに乗り込み使いこなせたのはニュータイプであったところが大きい(リアルに考えれば訓練無しに初めて乗った兵器を使えるわけがないので、ニュータイプという漠然としたものでリアルさを支えてるというような話がある。)のに、その少年少女達がZガンダムやガンダムMkII、百式と言ったMSをみんな乗りこなせてしまい、出来すぎな話になってしまった。ただ、後半はZガンダムと同じシリアスな話となった。この作品後、TVアニメに富野監督が戻って来るのは7年後の『機動戦士Vガンダム』になる。
1988年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
初の劇場作品でシャアとアムロの決着がつく、シャアとアムロのガンダムシリーズのラストの位置。しかし、シャアやアムロが生きているというサイドストーリーや、シャアのクローンが活躍するガイア・ギア(原作者なのに版権を持つバンダイがガンダムを付けるのを許さなかった為、ギアになった)という小説がある。
逆襲のシャアには小説版が徳間書店と角川書店から出ており、劇場アニメの設定に近いのは徳間版。角川版のはZガンダムやZZガンダムもそうだが、結構、アニメと違った話になっている。Zガンダムに出てくるシロッコの搭乗するTHE-Oは全身にメガ粒子砲を持つ、サイコガンダムのように描かれいる。ラストもカミーユは父親のイメージをTHE-Oに見たり、THE-Oはコロニーレーザーにより消滅し、ロザミア(TVアニメ版と異なり最後にカミーユが対峙するのがロザミアのサイコガンダムMkII)の波動を母親と勘違いするが、サイコMkIIの男性的なシルエットに激昂。ロザミアの死と共にカミーユ自身が崩壊する。アニメ版をご存じの方なら分かるだろうがかなり違う。逆シャアの小説版もそう。シャアもサザビーではなくナイチンゲールというMSに搭乗する。アニメ版と同じと思う無かれ小説版はひと味違うのだ。興味を持った方は逆シャアなら、一冊なので購入して読んでみるのも面白いかも知れない。今だとZガンダムが旬だけど、アニメより陰鬱なのは覚悟した方が良いので、劇場版から入った人にはどうか? と思う。
徳間書店版 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(前篇・後篇)
角川書店版 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン
その後、
1991年『機動戦士ガンダム F91』
1993年『機動戦士Vガンダム』
1996年『バイストンウェル物語 ガーゼィの翼』
1998年『ブレンパワード』
1999年『∀ガンダム』
2002年『∀ガンダム 地球光・月光蝶』
『オーバーマン キングゲイナー』
2005年『機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者』
と続いていきます。Vガンダム頃なんか富野監督かなり壊れていた。本人曰く鬱病になりかけていたらしい。でも、ブレンパワードは作品としてもとても面白いし、Vガンダムのような皆殺しも無く、私的には完全復帰。見たのはリアルタイムじゃなくて数年前ですけどね。でも、∀ガンダムの世界観とデザインが嫌いで視聴せず、キングゲイナーがWOWOWの有料放送だったことと、魅力的なロボットデザインじゃないので躊躇し、今に至ってたりします。
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