紅の詩

第Ⅰ節-夢と悪夢-

1/白夢-ハジマリ-

 怖い夢を見た……

 とても"怖い"夢……

 "怖く"そして、とても"哀しい"夢

 それはどこか異国の景色

 違う世界で自分は違う人間として生活している

 それはもう夢とは呼べないほど現実じみた感覚

 まるでその世界が現実で、現実が夢であるかのように錯覚するほど、余りにもリアルすぎる感覚――

 その世界で突如、戦争が起こる。全ての世界を巻き込んだ大戦争……

 誰も生き残ることなど出来ない、と本当に思えるほどの戦争……

 逃げ惑う声が飛び交い、悲鳴が木霊する……そこはまさに"世界の地獄"……

 自分の目の前で何人もの人が、まるで塵の様に消されていく……

 もはや、誰もが正常ではいられない……視界に映る人全てがもう"狂って"いた

 ある母親は自分の腕に抱いていた子供を自らの手で殺し、微笑ましかったであろう恋人達でさえ……互いの胸に刃を――

「これは、夢だ……」

 本当にそうなのか?

「……夢に決まっている……」

 何故、そう言い切れる?

「……だってこんな世界は――」

 僕は知らない……

 今まで生きてきた記憶の中にこんな世界はないから……

 だから――

「――こんな世界は現実じゃない――」


その言葉が……その世界での僕の最後の言葉だった――